ささやきはピーカンにこだまして
「うわーん、姉ちゃん!」
 校庭まで響きそうな大声をあげて、二紀(にき)がドア口に現れた。
「ごはん? ごはんでしょ? ……よかったぁ」
「うわっ」
 いいトシして、ひとの首にかじりつくなぁ。
 しかも制汗スプレーの良い匂い。
 どれだけすてき男子なの、あなた。
 むかつくわ。
「いま気づいて小松先輩にどうしようって……」
 はぁ…。
 小松に言ったところで解決策が出たとは思われないけどね。
「なっ。だから言っただろ? 八木(やぎ)はすっげぇ頼りになるやつなんだから」
「なによ、小松。こんなときに点数かせぎ?」
「ピンポーン。30点くらい上乗せしておいて?」
「そもそも0点だから、あんたそれじゃ赤点よ」
「ひどいよ、八木」「ぷははは」
 3人で大笑いして。
 ぽかぽかと温かい空気に包まれて。
 (うん……)
 こんなふうに、考える時間がないほうがいい。
 そうじゃないと、きみの背中を思い出す。
 黙って走っていく、きみの背中。
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