ささやきはピーカンにこだまして
 制服のない学校のわたしたちは、試合のときだけは、おそろいのオレンジ色のウインドブレーカーをはおる。
 学校名は入っていないから、胸についている大きなエンブレムだけが、わかるひとには高校生だとわかる、おそろい。
「今年は二紀(にき)(じゅん)もいてくれて心強い」
「余計に悪くない? 電気屋の店員じゃないっつーの」
「はははは」
 えらいぞ、二紀。
 小松が笑ってる。
「それにしても八木(やぎ)、本当にすごい荷物だね。それじゃあ電車よりタクシーがいいよね、うんうん」
 ――――あ。
 わたしが気づいたことに二紀も気づいたらしい。
 そっぽを向いた。
「そうか……」
 子どもが試合に出るなんて初体験で、あれこれ気を回しすぎる母さんのせいで、おおげさな荷物持ちになるわたしのためのタクシーか。
「…………」
 ごめんね、小松。…(じゅん)
 つきあわせちゃったんだね。
「ねぇ、八木、雨降る?」
 あんたは天気まで気になるのか、小松。
 どこまで心配性なのよ…と、どなりたいところだけど。
 バドミントンは湿度でシャトルも変える競技だからね。
 今日だけは良い心がけだってほめてあげないとね。
「降るよ。ね、二紀」
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