ささやきはピーカンにこだまして
振り返ったわたしが見たのは、準のオレンジ色の背中。
その背中がだれより大きく見える理由に、わたしはふいに気がついた。
似合っているから。
羽織ったひとを商店の呼びこみ係さんのように見せる派手なオレンジ色は、日に焼けた準にはよく似あう。
スポーツマンだ。
「どんなにみじめに翻弄されても、ぼくは最後まであきらめない。だから――、見ていてほしい」
「…………っ!」
それを、いま、わたしに言うの?
結城先輩の試合を見届けられなかった、弱虫のわたしに。
そんなの――…
「ずるい」
吐息のようにもれた声は準には届かない。
ずるいよ。
わたしはもう、こわくないって。
わたしはもう、どんなきみでも好きだから、きっと見届けてみせるって。
そんなこと言えないよ。
準の背中、遠くなっていく。
改札口から出てくる集団はもう二紀と小松を見つけてる。
「準!」
オレンジ色の背中が立ち止まる。
今しか言えない。
今なら、きみにだけ届く声で。
「弱虫!」