ささやきはピーカンにこだまして
「当たるなぁ、わたしらの天気予報は。亜美ちゃんに置き傘、貸してあげてよかった」
「自分はどうするの?」
「早く掃除に行きなさい」
 男子集団に(じゅん)も交じっていたなんて気づかなかった。
 このごろ、準はときどきこういうことをする。
 いつもはどこにいても目立つのに、フッと気配が消えている。
 それはほとんど、わたしがキャプテンぶっているときのような気がするから。
 やっぱり違和感があるのかなぁ。
「ちぇ。宮地や大島にはやさしいこと言ってたくせに」
 話しだすと、いつもの生意気・準だけど。
「あら。じゃあ、やさしーく言ってあげようか? 同じこと」
「いいよ。気持ち悪いから」
 気持ち悪い、か。
 ま…あ、そうだね。
 キャプテンとか柄じゃないのは、わたしもわかってるよ。
 回廊にはもうだれもいない。
 準は、スーッとわたしの横に立つと、空を見上げた。
「…………」
 初めて会ったときより、また背が伸びたんじゃないのかな。
 ストレートで相手校の3年生に敗れたブロック大会から、準がときどき見せるこの横顔。
 やわらかそうな頬はそのままだけど……。
 たしかにきみは変わったね。
 いつまでも、いつまでも、きみはそうやって、自分を責めていくのかな。
 黙々とただ汗をかいて、あの屈辱を追いかける。
 わたし…見てるよ。
 あれから、ずっときみを見てる。
 約束したものね。
< 168 / 200 >

この作品をシェア

pagetop