ささやきはピーカンにこだまして
 きれいに作ってもらったフルーツバスケットの籠を下げて。
 改札までとぼとぼ二紀(にき)のあとをついていった。
 伝言を…頼むべき?
 ごめんなさいって。
 伝えてもらいたい。
 でも……
「姉ちゃん、ちょっとこれ持ってて」
「ん?」
 渡されたのは、二紀が試験に出そうなところをまとめたルーズリーフが入ったトートバッグ。
 (じゅん)のために作ったら自分もいい復習になったと笑っていたけど。
 二紀がどれだけ準のことを心配していたか……。
 休む日が続くたび、こつこつ増やしていたんだろうページには、ところどころに《ここ大事》《これは大サービスの応用だよー》と色鮮やかな付箋がついていて、女子力が低いうえに努力もしない姉は恥ずかしかった。
 おまけに準に風邪をひかせたのは、絶対にわたしだし――。

「ぼく準に電話するけど。――ここうるさいから、ちょっと待ってて」
「あ…うん。これからうかがうって、連絡しておかなくちゃね」
 苦しくて、寝こんでいるかもしれないし。
 改札前の自由通路をロータリーに抜けていく二紀の背中をぼんやり追いかけながら、わたしの頭は準のことでいっぱい。
 風邪って……。
 まだ、ひどいのかなぁ。
 わたし…素直に送ってもらえばよかった。
 こんなことになるなら、わたし……。
 今さらあやまってもおそいよね。
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