ささやきはピーカンにこだまして
〔ここの204号 ねえちゃん そのジャンスカ すげえ似合ってる かわいい れっつごー〕
「な…に、これ……」
 ロータリーでは二紀(にき)が、今度は両手を振りだした。
「二紀……」
 ぴょんぴょん跳ねながらVサイン?
 あなた…知ってた?
 わたしの気持ち、知ってた?
「二紀ったら……」
 わたしにこんな…スカート着せて。
 これでちょっとはかわいくなったのかよぅ。
 あんたのこわい姉ちゃんは。
「おせっかい」
 でも……。
 ありがとう。

 わたしはいい弟をもって、しあわせよ。二紀。



 すー。はー。
 深呼吸して。
 ドア横の壁の部屋番号を何度も確認。
 なにしろ地図には国家公務員住宅と書いてあったし、敷地内の2階建てアパートの入口に設置されたポストは全部、居住者のお名前はなかった。
 郵便配達のひと、困るでしょうよぉ。
 なんなの、ここのかたがた。
「こ…んなことなら、ケー番もらっておくんだった」
 どうしよう。
 204号。
 まちがってない。
 うん。まちがってない…はず。
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