ささやきはピーカンにこだまして
 にらまれた女の子たち、かわいそうにシュンとしちゃったじゃないの。
「あっ……」
 同情してる場合じゃなかった。
 女の子たち、いなくなっちゃう。
 いやっ。ちょっと。
 ねぇ!
 入ってもいいって言ってくれた子、あなただけでもカムバ――ック。
 あ、あ、あ。そんな…待って!
 ひ一っ。ノルマがぁ。
「ちょっと二紀(にき)、どうしてくれるのよ。今の子、入部しそうだったのにっ」
 直接の原因はミドリジュンの発言のせいとはいえ。
 初対面でいきなり、どなるわけにもいかないし。
 二紀にやつあたり。
「今の子ってだれよ? 四条畷? 巣鴨? 鶴ヶ丘? …まさか。ない、ない」
「なんだってぇ」
 女の子の名前ならスラスラ出るんだから、こいつ。
 あんたなんか、生徒会長にまでなっておきながら、ヒマさえあれば年上の女の子のおしりを追いかけてる完全無欠の帰宅部だったくせして。
 ミドリジュンにつられてテニス部なんか入ったら、痛い目見るよ、絶対に。

「ああもう! どいてよ。じゃま」
 いまさらバドミントンをやれとは言わないからさ。
 わたしだってまた2年間も《八木(やぎ) 二紀の姉》扱いされるのはごめんだしっ。
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