ささやきはピーカンにこだまして
「ふん。えらそうに」
 二紀(にき)がそっぽを向いて。
 相変わらず黙ってわたしを見下ろしていたミドリジュンが、笑った。
「大変ですね、弱小は」
 なっ……!
「いったい、なんだってバドミントンなんです。わかんないなぁ。バドミントンて、正月の羽根つきみたいなもんでしょ?」
 はいぃぃ?
「ぼくも初等部のころは何度かやった気がするけど……。とても真剣に取り組めるスポーツとは思えない」
 …ん、で、すっ、て?
 こら、小松。
 なんとか言ってやんなさいよ。
 ばすっ!
 机の下で足を蹴とばしてやったのに痛いとも言わない。
 完全に頭のなか真っ白だな。
「…ま、ずいよ、(じゅん)
 二紀がわたしの顔色を敏感にうかがって、フォローに入る。
 妙なとこ、気がまわるんだから。
 むかつくぅ。
「ミドリくんね。バドだって、やってみたらなかなかこれで、たいっっへんなスポーツなのよ」
 わたしの顔を見て、二紀が一歩、うしろにずりさがった。
 長いこと姉に泣かされてきた弟の経験則ってやつだ。
「ねえ……」ミドリジュンは逆に一歩、近寄ってきた。
「お姉さんもバドミントンなんかやめて、僕とテニスしましょうよ。2年間、楽しませてみせますから」
「はぁ?」
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