ささやきはピーカンにこだまして
「もう1回、言ってもらえるかな? 実取くん」
「なにをですか? 二紀は悪くないって? ああ、それとも、バドなんかやるやついないってところかな?」
「…………」
こ…いつ。
わかってやってる。
わたしが怒るって、わかって言ってるね。
「準たらっ」
「あんたは黙ってなさい!」
二紀がわたしの怒声にちぢみあがって。
ついでに結城先輩が、ずりっと一歩うしろに下がるのが目の端にちらっ。
あーもうっ。
どうしてわたしってこうなのよ。
泣き落としはどこにいった。
姉のかしこい作戦は、どこに消えたのよう。
…だけど。
これがわたしなんだもん。
愛する先輩の前だからって……変われない。
でも、それもこれも、あんたのせいよ、ミドリジュン!
怒り倍増!
「ナンカっていうんなら。結城先輩と勝負してごらん、坊や。その…ナンカが、どんなもんか、教えてもらうといいわ」
「まいったなぁ、そんな子ども扱いしなくたっていいじゃないですか、お姉さん」
だれがオネーサンだっ。
「や、めろよ、姉貴。軟テの実取 準……。さんざん話したろ。準は去年の都のジュニアで優勝してるんだぜ」
「やだなぁ二紀。そんなことを言ったら、お姉さんの好きな結城先輩が、ぼくに負けて恥をかいちゃうから、やめとけって言ってるみたいだぜ」