ささやきはピーカンにこだまして
「本当になぁ」
拳をにぎりしめたわたしの横で、くすっと笑ったのは結城先輩。
指先がわたしの背中に、とんとんとサイン。
もっとやれって言っている。
そうですね。
バドミントンてどんなに過酷なスポーツか。
ボールと違ってガットに当てただけでは飛ばないシャトルにスピードを与えることがどれほど大変か。
こんなに観衆がいるまえで、とうとうと語るチャンスだ。
わたしはコクッとうなずいた。
「そうだったっけ。軟テやってたんだっけ、きみ」
でも、ごめんね先輩。
わたしはやさしい先輩とはちがう。
鬼だから。
わたしも今、新しい道を発見しちゃったよ。
「そ、そーだよ、姉貴。思い出してくれた? ねっ。――ここはおとなしく帰ってよ。今度のことは力になれなくて悪かったけど、ねっねっ」
「そんなに謝ることないわよ、二紀」
「姉貴ぃ。やだ、なに考えてんの?」
おや。さすがにするどいわね、弟よ。
そうよ。
あんたたちは今、人生の分岐点に立ったのよ。
まだ気づいてもいないだろうけど。
「わたしとやりましょう。実取くん」
「えっ」「八木!」「おねーさんと?」
えーっと。
そんなに驚くようなことでもないと思うんだけど。
令子ちゃんたちは廊下の壁に張りついちゃったし。
結城先輩は、植えこみから猫が飛び出してきたみたいな顔でわたしを見ている。
言ってしまったことは意地でもやるわたしをよく知っている二紀の目は、わたしと実取をおろおろと往復するばかりで。
冷静なのは実取、あんたとわたしだけね。
拳をにぎりしめたわたしの横で、くすっと笑ったのは結城先輩。
指先がわたしの背中に、とんとんとサイン。
もっとやれって言っている。
そうですね。
バドミントンてどんなに過酷なスポーツか。
ボールと違ってガットに当てただけでは飛ばないシャトルにスピードを与えることがどれほど大変か。
こんなに観衆がいるまえで、とうとうと語るチャンスだ。
わたしはコクッとうなずいた。
「そうだったっけ。軟テやってたんだっけ、きみ」
でも、ごめんね先輩。
わたしはやさしい先輩とはちがう。
鬼だから。
わたしも今、新しい道を発見しちゃったよ。
「そ、そーだよ、姉貴。思い出してくれた? ねっ。――ここはおとなしく帰ってよ。今度のことは力になれなくて悪かったけど、ねっねっ」
「そんなに謝ることないわよ、二紀」
「姉貴ぃ。やだ、なに考えてんの?」
おや。さすがにするどいわね、弟よ。
そうよ。
あんたたちは今、人生の分岐点に立ったのよ。
まだ気づいてもいないだろうけど。
「わたしとやりましょう。実取くん」
「えっ」「八木!」「おねーさんと?」
えーっと。
そんなに驚くようなことでもないと思うんだけど。
令子ちゃんたちは廊下の壁に張りついちゃったし。
結城先輩は、植えこみから猫が飛び出してきたみたいな顔でわたしを見ている。
言ってしまったことは意地でもやるわたしをよく知っている二紀の目は、わたしと実取をおろおろと往復するばかりで。
冷静なのは実取、あんたとわたしだけね。