ささやきはピーカンにこだまして
 まっすぐわたしの視線を受け止めるなんて。
 なかなか楽しい子じゃないの、坊や。
 うーん。
 燃えてきたぁ。

「そう、わたしと。それで、わたしが勝ったら二紀(にき)ときみは、その、だーれも相手にしていない、バドミントンなんか! …のバド部に入る」
「…ちょっ、姉ちゃん! なんでぼくまでっ」
 おだまり。ついでよ。
「ぼくが勝ったら?」
「あら。きみが勝ったってなにもなしよ。だってご自慢なんでしょ? テニスの腕前は。それに男子が女子に勝ったって、いばれることじゃないんじゃない?」
「言いますね」
 言いますよ。
「OK。で、いつにします?」
「や…めろよ、(じゅん)
 二紀が勇敢にも、視線で切りつけあっているわたしと実取(みどり)の間に割って入ってきた。

「ガキみたいなまねよせ、準。だいたいおまえ、テニス部…どうするんだよ。姉ちゃんもやめろよ。恥かくだけだぞっ。――止めて! 止めてくださいよ、結城さん!」
「まぁまぁ弟くん。八木(やぎ)はこういうやつだから。やらせとけば?」
「そうだよ。まさか二紀……、おれが負けると思ってんじゃないだろ?」
「姉ちゃん!」
 なによ。
 なんでわたしにすがるのよ。
 見てごらん。
 あんたの実取は男らしいじゃないの。
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