ささやきはピーカンにこだまして
「わかりました」
 実取(みどり)が応えて。
 二紀(にき)が見ているほうが恥ずかしい安堵のため息をついたとき。
「やるか?」って、結城先輩が笑って。
「もちろん」って、実取が答えて。
「え?」「へ?」
 わたしと二紀は、おんなじ顔で、まぬけにびっくり。

「よし。テニス部のほうはまかしとけ。おれが悪者になってやる」
「えー。なにそれ。やだ。だったらぼくもバドやる」
「お、八木(やぎ) 弟。きみもくるか? うん、バドは戦略勝負だからな。頭の良いやつは伸びるぞ、大歓迎だ」
「歓迎されちゃしょうがないよね、(じゅん)
 あー。
 わが弟ながら、この主体性のなさかげん。
 なさけない。
 がっくり落ちていた頭を持ち上げたら、結城先輩にぺこりと頭を下げていた実取と目が合った。
 なによ。
 そらさないで、じーっとわたしを見る目に、生意気に、だんだんキラキラおもしろそうなファジーな輝き。
「なに?」
 きゅうに天使の輪っかが、まぶしく見えちゃうわたしって。
 ちょろすぎない?
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