ささやきはピーカンにこだまして
第6章『恋って…どんな?』
 ビュワーシュ!

 なんとも形容しようのない、空気が切り裂かれる音がアリーナに響いている。
「すごい音するようになったねぇ、実取(みどり)のショットは」

 バシュッ!

 本当に。
 今のバックショットなんか、もう親指が効いている。
 長年あいつが親しんできた軟式テニスのグリップから持ち替えて、まだいくらもたたないのに……。
「だけど、結城先輩も大変よねぇ、いきなりシロートの1年坊ふたりかかえてさぁ」
 でも――。
 うれしそうだよ、先輩。
 まぁ、あんなに熱心にむかってこられたら、教えるほうだって、やりがいあるよね、きっと。
 コートに入ると…別人なんだもん、あの子って。

 白いコンプレと短パンが日焼けした肌とセットになると、こんなにまぶしいなんて知らなかった。
 基本、体育館で会うみんなって、バレー部の子も卓球部の子も、夏でも屋内練習ばかりだから色白だしなぁ。
 おまけに、なにがちがうんだろうって、しばらく観察していてわかった。
 実取って汗をかかないんだよね。
 この程度の練習じゃ、ものたりないのかもなぁ…やっぱり。
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