ささやきはピーカンにこだまして
「ねぇ、本当の恋ってどんなかな?」
「はぁあ?」もうフロアに寝そべっている桃子が顔だけあげる。
「少なくともそれは、今、考えることじゃないわね」
 むむむ。
 先に恋バナをふってきたのは、そっちでしょ。
「はい。さっさと始めるぅ。いーぃぃぃっち」
「…………」
 さすがに次期キャプテン。
 切り替えがおじょうずですね。
 はぁ…。


 腹筋背筋、腕立て、スクワット。
「姉貴ィ」
 タックジャンプに入ったとき、二紀(にき)がトコトコと近づいてきた。
「部活中は先輩…でしょ」
「いいじゃん、姉貴で。だいたいそんなこと言うなら、姉貴のことイチローさんとか、ふざけて呼んじゃってる(じゅん)にも、ちゃんと言いなよね」
 うっ。
「言ってるわよ。あの子はてんでひとの言うことをきかないのっ」
「ぼくだったら、とっくにアザだらけだよな」
「よくおわかりで」
 ペしっ!
 むき出しの腕にチョップ1発。
「いってぇな、もう」
 二紀が大げさに腕を振ると、わらわらと寄ってくる2年女子。
「やだ、メーメ、なにすんのよ」
「大丈夫? 二紀ちゃん」
 な…んなんだよぅ。
 みんなして、こっそりわたしたちを見てたわね。
「メーメって家でもこうなの?」
「今度こんなことされたら、わたしたちに言ってきなさい。ねっ」
 みんなして甘やかしちゃって。
 勝手にやってろ。
 みんなだってもう気づいてるんでしょ?
 こいつが悪名高い年上キラーの元中等部生徒会長様だって。
< 75 / 200 >

この作品をシェア

pagetop