ささやきはピーカンにこだまして
この頃わたしには、実取がよくわからない。
体育会系で、ケジメがある子なんだって、本当は感心してあげなくちゃいけなんだろうけど。
部活のときは言葉づかいまでコロッと変わるんだから。
「はい。セット、オッケー。サンキュ、八木。じゃ、みんなぁ、始めるよー」
「はぁーい」とそろう、だらしない返事にも小松は怒らない。
見習わないとなぁ。
「じゃ、実取。自分のフォームを見直すよ」
小松が相変わらずゼーゼーしながらラケットを手に取った。
なんだかんだ言って、二紀といっしょにサボッている女子組より、よっぽどがんばるよね、最近は。
これもジュニアチャンプだった実取の、良い影響なのかな。
うん。わたしもガンバ、ガンバ。
鏡に向かってのストローク練習は、わたしの大好きなもののひとつ。
なんていったって、振り向かなくてもコートのなかの結城先輩が見えるから。
見ていれば、うれしいんだ。
美香キャプテンがそばにいてもいいの。
そんなの恋っていう?