ささやきはピーカンにこだまして
 んもう! 
 桃子のせいで、イロイロ考えちゃうじゃないよう。
「練習、練習」
「八木せんぱーい、おとなり、いいですか」
 あー、はいはい。
「おいでー。わたしじゃ良い見本にはならないかもだけど、まねしてみてねぇ」
「はい! お願いします」
 うんうん。
 1年女子は真面目でかわいいなぁ。
 どうか、二紀の毒牙にかかりませんように。
「まずはオーバーヘッドストロークね。スイングよりも足の動きを見てみてね。軸足に重心…わかる?」
「はい! こう…ですか?」
 うむうむ。
 熱心。
 結城先輩の気持ちがわかるなぁ。
「で。ここ。インパクトポイント。ちゃんと見る」
「はい!」
「で、ここで体重移動があって……スパーン!」
「うわぁああ」
 令子ちゃんが小さく拍手してくれた。
 まじ、かわいいわぁ。
「じゃ、カウントして。10回振りまーす」

「ね、ね、姉貴ったら」
 せっかく真剣に素振りを始めたのに、二紀が、からみつく先輩女子たちの甘々な手を振りきってまたやってきた。
 令子ちゃんが、あわててうしろに下がる。
 そうそう。
 ちゃんとよけてね、このバイキン男を。
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