ささやきはピーカンにこだまして
第7章『秘密の生まれた日』
 午後6時半。
 大学生で混みあうJRの公園口を、繁華街のほうに歩くには障害物競走のノリが必要で。
 例によってガキんちょふたりは、どんなに混んだ道もふたり並んですいすい歩いて行く。
「あ、ごめんなさい」
 わたしばっかりひとにぶつかられるのは、なぜなのよ。
 わたしはちゃんと避けてるのに。
 女子がぶつかってくる率、ハンパないんですけど?

「姉貴、なにやってるの」
 二紀(にき)が振り向いて唇をとがらせる。
 見たらわかるでしょ、歩いてるのよ。
 し、か、た、な、く!
『姉貴がいてくんなきゃ、だめなの』
『そうですよ。イチローさんも行きましょうよ』って。
 強引にわたしのスポーツバッグを取りあげたのはあなたたちでしょ。
 荷物を持ってくれるスマート男子だなんて、金輪際、思わないからね。
 わたしのバッグは人質だ。そうでしょ?
「あーあ」
 誕生日ねぇ……。
 誕生日くらい、カノジョと遊べばいいのに。
 なんで二紀なのよ。
「びーえる?」
 聞こえないと思ってつぶやいたのに。
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