ささやきはピーカンにこだまして
「おまえといると、恥ずかしいってどういうことか、まじ、思い知るわ」
 うつむいちゃって、かわいいじゃん。
 いや、顔が上げられないのはわたしもだけどさ。
「お愛想スマイルはプライスレース!」
 二紀(にき)はぺこぺこと店内の女性たちに頭を下げている。
 そんなことしたら、ずっと見られちゃうだろ、ばかすけが。
「…も、いいから、食べて実取(みどり)
 さっさと食べて、さっさと出よう。
 こんなやつ、わたしは弟と思わないから、あなたも友だちと思うのはやめなさい。
 ほれほれと掌でケーキをすすめると、実取 (じゅん)がじーっとわたしを見ている。
 なに?
「――まだ言われて…ない」
 はい?
「まだイチローさんに、言われてない」
「…………」
 なにを?
「…………」
「…………」
 本気でわからなくて。
 とりあえずフォークに伸びた手を二紀にはたかれた。
「姉ちゃん、おめでとうは?」
「…はい?」
「準に、おめでとう」
 (あ!)
 準のケーキにのっているプレート。
 そうだっけ。
 どうしましょ。
 まさか異世界人にたしなめられるとは。
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