ささやきはピーカンにこだまして
「ごめん。お誕生日おめでとう、です」
「…………」
 ちょっと。
 ちゃんと言ったのに、お礼は?
「はいはいはい。じゃ、いただきましょー。どれからいくかな」
 二紀(にき)の声にハッと我に返る。
 そう。
 恥ずかしいのは、これもよ。
 なんで3人なのに、テーブルに7個もケーキがある?
 おかしいでしょ、これ。
 これだけたのんだら、そりゃ特別サービスだって、されてもいいわよね。
 想定個人単価、余裕で超えたよね?

「ねっねっ、(じゅん)、このコーヒー味のやつは? 食べる?」
「おれはシフォンケーキってつまんないから、好きじゃない」
「ひとつくらいアジ変があってもいいかと思ったんだけどねぇ」
「……ぅ……」
 生クリームこってりに、チョコレートたっぷりに、カスタード大盛り!
 そのうえコーヒーに砂糖を2個も入れるやつが、なにを言う。
 見てるだけで気持ち悪くなってきた。
 わたしが紅茶のシフォンケーキを半分やっつける間に、ふたりで3個ずつ。
「姉ちゃん、食べないの?」
 食べないんじゃなくて、食べられなくなったの。
 あんたたちの食欲を見て!
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