ささやきはピーカンにこだまして
「そんな話じゃないでしょ」
 二紀(にき)とはオカズの取りっこもするけど。
 よその子と……、こんな……。
「生クリームおいしかったから、イチローさんも次は食べてみてね」
「…………」
 わたし?
 わたしが変?
 こういうの、ふつうなの?
 でも、わたし、もう食べられないよ。
 どうしよう。
「いやー。これが全部イチローさんのオゴリだと思うと、倍おいしいよね」
「えっ?」
 ぜ…んぶ?
 全部って、ケーキ7個とコーヒー3杯。全部?
「ジョーダン! ばか言ってなさい」
「だって……ぼく、誕生日なんですよ?」
 (じゅん)は悪びれもせずにテーブルに頬杖をついて、にっこり。
「いやなら、姉ちゃんはラケット代をカンパしてくれなかったって、おふくろに言いつけるぞ」
 二紀のやつ、しら一っと天井を見上げちゃって。
 しかも、おふくろ?
 笑うわよ。
「だったら最初にそう言いなさいよ」
「言ったらどうなった?」
 どうなったって。
 そんなのあたりまえでしょ。
 絶対に1個しか食べさせない。
「――――あ」
 二紀がニヤニヤ笑っている。
 あんた、どこまで策士なの?
< 87 / 200 >

この作品をシェア

pagetop