声と性癖
忙しいんだろうな、と結衣は察する。
「よかったらどうぞ。お仕事中ですよね!お邪魔して、ごめんなさい。」
にこっと笑い、くるりと振り返った。

「ちょっ…。」
帰ろうとしたその腕を蓮根に掴まれる。
「たくさん、ありますよ。」

「んー、一応、多めに買ったんです。でも、邪魔しちゃ悪いなあって思いまして。」
蓮根に微笑まれた。
「邪魔になんて、なりませんよ。あなたって人はもう…。」

「驚きました?」
結衣はそう言って蓮根の顔を覗き込む。
サプライズが目的だったのだ。その目的は充分果たせたと思う。
なぜなら、蓮根はとっても動揺しているから。

「とてもね。けれど、嬉しいです。せっかく来たのだし、会社の中を見学して、一緒に頂きませんか?これ。」
そう言って、蓮根が紙袋を掲げる。

結衣は嬉しくなって、ぎゅうっと蓮根の腕に掴まった。
「ぜひ!」

ここがオフィスです、と見せてくれたのがやはり、中2階。
手前は応接で、奥がオフィスとのことだ。

外観同様、社内もシンプルでオシャレである。
3階は、会議室と蓮根のオフィスがある、という事だった。

「僕のオフィスで食べましょう。」   
「はい。」

蓮根のオフィスは、大きなデスクにパソコンのモニターが三面。
更にその横の脇机の上にも、ノートパソコンが置いてある。
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