声と性癖
資料が入っているとおぼしき、鍵付きのキャビネがいくつもある。顧客情報だろうか。

そして、専門書の入った本棚。
応接セットはシンプルながらも凝ったデザインで、黒で統一された内装は、蓮根らしい気がする。
なんというか、とても、らしいオフィスだ。

「つまんなくて、申し訳ないですね。」
「いえ、シンプルでいいなぁって思いますけど。」

「結衣さん…」
「はい…?」
「あなたは、僕を喜ばせるのがとても上手ですね。」

オフィスの中を見学していた結衣を、蓮根が後ろから抱きしめる。

「声だけじゃなくて、会いに来てくれるなんて、嬉しい。僕のことを心配して、食事まで持ってきてくれて。この前の写メも、とても嬉しかった。大事に使っていますよ。」

ん?使って…。

「え…と、涼真さん…?使って…?」
結衣は身体を捻って、後ろの蓮根を見る。

「ええ。結衣さん、ベッドの上でしたから、もうそ…いえ、想像が膨らんでしまって…」

品良く微笑まないっ!!
妄想…って言おうとしてるから!
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