声と性癖
それにしても、
「初めてなんです。」
と、少しハニカミ気味に言うその姿に、胸を掴まれるような気持ちになる。

ワードに破壊力がありすぎるな。

蓮根は気持ちを落ち着けつつ、隣でお茶を頂いている結衣を見た。

すっと伸ばした背筋の、背中からウエストにかけてのラインが、きれいなカーブになっていた。

お茶を飲むために、少しだけあおのいている、顎から首へのラインにも、想像を駆り立てられる。

仰のいて嚥下する様に、今すぐそこに唇をつけたい、という気持ちになったから。

押し倒してあの白い首に思う様キスしたら、どんな声を出すんだろう。
とても聞いてみたい。

次に海へと移動した。
こんな時期に海もないものだろうか。と思いはしたのだが、結衣は素直に喜んでくれた。

結衣があまりにはしゃぐので、本当に可愛くなって、蓮根は結衣の手をきゅっと繋ぐ。
「転ぶといけませんから。」
そんなのは口実だ。

「転びませんよ。」
笑顔が帰ってきて、そんなのは口実だと見抜かれているのかと思った。

それでも、結衣はふりほどくことはしないで、繋いだままにしてくれのだ。

可愛くて、思いやりがあって、優しい。
結衣のそういうところが、蓮根には好ましい。
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