声と性癖
結衣の手は、小さくて、少し温かい。
その温かさに生命力のようなものを感じて、とても、いいなと思う。

結衣がきゅっと身体を縮めたので、寒いのかと思い、車に戻ろうかと言ったら、もう少しここにいたいと言われた。

いるのは構わないが…。
防波堤で座るか。

しかしコンクリートの防波堤は、下が冷たい気がして、そこに、結衣を直接座らせることなど出来ない。

結衣を膝に乗せると、最初じたばたしていたけれど、子供をあやすように抱きしめて、しー、と囁いたら大人しくなった。

どうやら、大人にも有効なようだ。

しかし子供と違うのは、近いですと照れている様子が、こちらの劣情を煽るところと、抱き合う程に近い距離だと、何だかいい匂いがする事だろう。

いい匂いがする、と言っても本人は何もつけていない、とくんくんしているだけだ。

ではシャンプーが柔軟剤か、そのようなものだとは思うが、結衣のいいところはそれだけではない。

今日の服も、表情もとても良くて、素直に褒めたら褒めすぎだと照れてしまう。
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