声と性癖
「ほら、照れたからってうつむかないでください。その顔も見せて。」

「涼真さん…、も、無理…。」
「本当に可愛いですね、結衣さんは…。」

蓮根はすいっと、結衣の顎に手を添えた。
「ねえ?前言ったこと、覚えてますか?」
「前…?」

いろいろ、言われすぎて何だろう…?

「次に会ったら、あなたを隅々まで奪い尽くす、と言いましたよね。心も、身体も全て僕のものにするから、と。」

確かに!え…けど、それ…
「い、今ですか?」
「今でしょ。」
既視感のあるこのやり取り。

「あ、いや、涼真さん、お仕事は?それにねっ、ここ、会社ですよ!」
「背徳的ですね。ドキドキしませんか?」

いや、それは超絶、ドキドキはしますけど…。
涼真さん、嬉しそうだな…。

「んっ…」
唇を重ねられる。

蓮根の甘いため息に、結衣まで背中がぞくん、とする。
「は…ぁっ…、結衣さん…」

お願いだから、そんな、甘い声、出さないで。
どきどき、する…。

「んっ…あ…」
堪えられない声が結衣の口から漏れて、それすら、絡め取られるように、キスをされる。
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