声と性癖
「結衣さん、僕だけにしか見せたことのない姿を見せて。僕だけに見せてください。僕だけを欲しがって。僕の名前だけを呼んで。僕の前でだけはいいんですよ、恥ずかしい姿を見せても。」

優しく耳元で囁かれる。
「ね、おねだりして?欲しいって言って?」

「んっ……、あ、涼真さん、お願いっ……」
「じゃあ、ここに手をついて。」

椅子の背に両手を着くように、身体の位置を変えられる。
「大丈夫。ここにいますから。」
その声は煽るだけではなくて、まるで、結衣を安心させるかのような、包み込むような声だった。

大丈夫。蓮根はそう言って、結衣は後ろから抱きしめられ、両手をその大きな手で、包み込まれた。

結衣の背中の全面に、蓮根の体温を感じる。
ぴったりとくっついたままで、蓮根は後ろから囁いた。

「ちょっと、もう……ね、抑えられない、と思うんですよ。この方がいいかもしれないから。」
「え……」
         
振り返ると、先程までの余裕が嘘のような、苦笑で、蓮根が結衣を見ている。

「僕ももう、限界なんです。」
カチャ……というベルトを外す金属音がやけに結衣の耳に響く。
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