声と性癖
センター長である野坂からは、今回はさほど人数は多くないとは聞いてはいるが、それでも緊張する。
会社から提供されている資料を人数分用意し、当日、研修室に向かう。

今回は8名の研修を結衣が行うことになっていた。

多い時で、20名程と聞いているので、確かに少ないが、結衣としては自分で把握出来るギリギリの人数だ。

研修室のドアを開け、結衣が中に入ると、研修を受ける側も、緊張している様子なのがひしひしと伝わってくる。

コールセンターには、経験者、未経験者、年齢も幅広く入ってくるものだ。

今回も、下は24歳の深夜勤専門の未経験の契約社員で、上は40代の経験者のパートさんだ。
この幅広い生徒さん達を2週間で、当社のコール対応出来るまで育てるのが結衣の仕事である。

「では、資料をお配りしますね。1番上に今回の研修の日程と資料の内訳がありますので、揃っているかご確認下さい。」

今日は念の為に、と研修室の後ろにはセンター長の野坂が控えてくれている。

野坂はこの道10年以上の大ベテランで、この会社の各コールセンターを転々としながら現在の位置にいる、という人だ。
< 152 / 270 >

この作品をシェア

pagetop