声と性癖
コールセンターが大好きで、お客様対応が好きで、これで食べていくと決意した時に、アナウンサーの専門学校まで通ったという経歴の持ち主で、結衣も今までの上司の中で指折りの尊敬する上司である。

立ち姿も声も美しいその人は、結衣に笑いかけてそっと部屋を出ていった。

良かった。まずは合格点らしい。
資料に沿って研修を進める。
比較的頭の冴えている午前中を座学に充てていて、午後は発声や、機器に慣れてもらうよう実際の機械と同じものを使用して研修する。

「皆様、午前中の座学は一日終わったらペーパーテストを実施しますので、こちらも真面目に受けて下さいね。」
研修生からは、ええーっという声が上がる。

「大丈夫、大丈夫。真面目に受けてたらチョロいから。」
「高槻さん、見た目に反して厳しいですぅ。」

「みんな、やってるので頑張りましょうね。ちなみに合格点に達しない方はお残りです。」
結衣がにっこり笑うと、オニだぁぁ…と声が上がった。

ふふふー!楽しいなぁ。

それに、ぎゃーとか、わーとか、直ぐに声が出るのは反応良くていい事だ。
うんうん、いいチームかも。

女子率が高い中、今回は深夜勤の派遣社員が男性だった。
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