声と性癖
「だから、藤川さんのバックには1万人いますから、藤川さんが対応出来なくても、知らなくても、誰かが必ずそのノウハウを持っています。自信を持って確認しますって言っていいですよ。必ず解決方法はありますから。」

これも結衣が上司に言われたことだ。
一人で悩まなくていい。
どんどん周りを頼りなさい、と言われた。

それは今も結衣の中にあって、だからこそ色んな人に助けられつつ、結衣は仕事を進めていると思っている。

ひとりじゃないもん。

「知識は確かに必要なんだけど、ここで必要なもの、なんだと思いますか?」
「保険のご案内、でしょうか?」

「それも、もちろんなんだけど、まずは電話の向こうの方に安心してもらうことです。そして聞いてください。今、どういう状況なのか。
判断はそこからです。仮に分からないことがあってSVに確認するとしても、何も分からないでは私たちも困ることもあります。」

結衣はにこっと笑った。
「大丈夫!私達もいますから、バックアップします。」
「はい。」

俯いていた、藤川が、少しづつ顔を上げてくれる。
結衣は嬉しくなってきた。

「そうだ!藤川さん、この後時間あります?」
「はい。」

「もう、夜勤の方が出勤していると思うんですよね、コールセンターを覗いてみませんか?」
「え?!」
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