声と性癖
だから、少しでも優しく聞こえるように、結衣は蓮根に声を掛けた。
「会いたいのは、私もですよ。直接お話出来たらいいのにって、思いますけど……」

『結衣さんの姿……見たいです……』
ちょい待ち。なんのおねだりかな?

「涼真さん……」
『なんですか?結衣さん。』

「ダメです。」
『何がです?』

「今、コレクションを増やそうとしたでしょ。」
『さすがですね。察しがいい。ダメ?だって、会えていないんですよ?』
甘い声で、結衣を落としにかかる涼真だ。

「し、仕方ないじゃないですか。お互い、お仕事だし……。」
『結衣さんは僕に会いたくならないんですか?ぎゅって、して欲しくない?』
「それは……」

『結衣さん、僕にぎゅうってされるの、好きでしょう?この前も、僕が後ろから結衣さんを抱きしめて、一緒に映画観ましたよね?あの時の結衣さん、すごく可愛いかった。』
「う……。」

言葉に詰まったのは、確かに最初の数十分は映画を観ていたのには間違いはない。
けれど、途中から後ろから結衣を抱きしめていた涼真が、耳にキスしたり、うなじを舐めたり、してくるからそれどころじゃなくなって……。
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