声と性癖
『……は……結衣、さん……』
その、囁きと息遣いと、熱の籠った声に、結衣は思わず、ぎゅっと目を瞑ってしまう。

「……っんっ……」
『結衣さん、今、おうちのどこにいます?ベッド?』

「……っ、はい……」
『風邪引くといけない。布団に入って下さい。横になって?』

「え?なんで……」
『リラックスして?』

「大丈夫っ……です。」
『結衣さん、いいから横に。目を閉じて?さっき……想像したでしょう?』

このままだとダメだ。
そう思うのに、その声に逆らえなくて。
ゆっくりと結衣はベッドに横になった。
「っ……横に、なりました……」

『目を閉じて、僕の声を聞いて?』
心臓のどくんどくんと言う音が耳元にまで、響いている気がする。

こんなことは、したことがない。

涼真がなにをしたいのか、なにをさせようとしているのか、何となくは分かるけれど、怖くて、恥ずかしいのに逆らえない。
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