声と性癖
「……涼真、さんっ……私、や……」
『大丈夫。僕がいます。目を閉じてみて。声だけ聞いて。』

「……っ。」
『……は……だから、その息遣い……電話からでも、漏れてくるあなたの声、我慢出来なくなりそうだ。ねぇ?結衣さん、僕もすごく興奮してる。だから、ね?』
「ん…」

『一緒にいる時のこと、思い出して?僕が背中から、結衣さんを抱きしめているところ。僕はいつも、僕の胸に結衣さんの温かさを感じる。時に……熱さも……。』

その声を聞いていたら、結衣も思い出す。
背中を覆う胸と、すっぽりとその中に入っている時の心地良さ。

『僕の腕の中に収まってしまって、髪からはシャンプーの香りがする。うなじにキスすると、時々、結衣さんの香水の匂いがして、それにもドキドキするんですよ。』

優しい声が、その時のことを思わせるように、言葉を紡いでいく。
目を閉じたら、確かに温もりはないけれど、涼真の声で存在を感じる。

『それから、結衣さんの身体に手を這わせる。指先でも、あなたを感じたいから。柔らかい皮膚の感触も。僕はいつでも思い出せます。』
結衣だって、触れられた時の感触が、まざまざと思い出されてしまうのだ。
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