声と性癖
自分の手のはずなのにそれはまるで、自分の手ではないようだった。
その声に、言葉に、結衣は翻弄される。

そうして、いつの間にか漏れ出る声を抑えられなくなっていた。

『っは……イきそう?いつでもイッて、いいですよ。結衣さん、お願い、音聞かせて?携帯、ハンズフリーにして。両手で、触れる?』
結衣は浮かされたようにハンズフリーにして、両手で触れる。

「っふ……あぁんっ」
『可愛いっ、その声とその音、ダメです。僕も気持ちいい……』

結衣も電話越しにくちゅ……と濡れた音が聞こえる。
『分かる?僕も……すごく気持ちいいって……』
分かる。感じてくれているのがとても分かるし、それで自分も感じてしまうから。

「ん、興奮します……。あ、やっ……涼真さん……や、ダメ、イッちゃうっ……」
『結衣さん、僕もイく、イキそうだ。一緒にいく…?』

「あんっ……涼真、さぁん、一緒に、いきたいっ……ん、んあぁ、や、……」
逆らいがたい浮遊感にも似た到達点。

はあっ、はっと電話越しに伝わる涼真の荒い息遣いに、結衣も身体が熱くなる。

二人の呼吸が重なって、結衣は身体を大きく反らせた。
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