声と性癖
その瞬間、ふわっとお姫様抱っこされ、女子勢からきゃぁぁーという黄色い悲鳴が上がった。

「涼真さんっ、あの、大丈夫だから……」
「降りたら、その場で舌も入れたキスをします。」
みんなには聞こえないよう、低く耳元で囁かれて。

うっ……。
なんなの、その脅しー。

結衣は抵抗をやめる。
だってこの人やるって言ったら、絶対やるもん。

「そうそう、大人しくして下さい。」
にこっと結衣に向けて笑った顔が、なんか怖い。

「では、みなさん、すみませんが、結衣さんが心配なのでこのまま失礼します。」
蓮根は両腕に結衣を抱えたまま、文句のつけようのない笑顔を、皆に向けた。

「はーい、失礼しまーす。」
「結衣先生、お大事にー。」

車の横に立っていた佐野が、「どうぞ、お姫様」と助手席のドアを開けてくれる。

マジ、顔から火が出そう……。
「す……すみません……」
「ありがとうございます。」
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