声と性癖
「シフトなんだっけ?」
「そーなの、曜日とか時間の感覚がおかしくなりそうだよ。」

そういえば、なんとかさんは異動になったよーとか、今は査定はこんな方針だ、とか、センターではこんな取り組みをしている、とか情報交換も交えて話をしていたところ、お店のご主人が入ってくる。

「ごめんね、楽しんでいるところ……、同業の人が来ているよ。」

途端に声が小さくなる結衣達だ。
「え?誰ですか?」

「営業さんかな…。向こうも気づいていて、本社の子達だって分かっているみたい。できれば、ご挨拶されたいそうなんだけど。」

営業も、代理店も、お客様のようなものである。
この人たちが稼いでくる数字で成り立っているのが、保険会社だ。

「よかったら、お伺いしますけど。」
「いや、ご挨拶だけ、と言っていて。大丈夫?」
「はい。」

しおらしく返事をしながら、変なこと言ってないよね?の雰囲気になる。
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