声と性癖
「こんな姿、誰にも見せてませんっ……。それに、他の誰にも、こんなこと許さない。涼真さんだけ……涼真さんだけ、なのに……」    
「そう。僕だけに見せて。もっと乱れて。一緒に、溺れよう?」
結衣を見つめながら、首元にキスをした涼真は、唇を肩から腕の付け根へと移してゆく。

どこも触れられるところ、全てがひどく熱くて、ちゅ……という音がする度に、結衣は腰が揺れてしまう。

「っあ……」
肩にも、二の腕にも、色濃く花びらのような痕がついていく。

「結衣さんっ……僕のだ、僕だけのっ……」
気付いたら、二の腕に歯が立てられていた。

「んっ!い、痛……いです、や……それ、いや……」
結衣が目尻の涙を零して、ゆるゆると首を横に振ると、涼真はやめてくれて、今気付いたようにその歯型を見ている。

「痛い?」
涼真は優しく首を傾げて、甘い声で聞いてきた。

「痛いのは、いや……」
「ん、分かった。」
涼真は今度は、自分がつけたそれを、優しく舐める。
動物が傷を癒すように。
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