声と性癖
その高槻は蓮根に、心配気な憂いを帯びた表情を向けてられていた。

「車から降りたところで、転びそうになっているのが見えたので。大丈夫ですか？結衣さん。」
「だ、大丈夫です。」

ホントかよ。
出待ちじゃねーのか……？
佐野はそう思って、2人をちらりと見たあと迎えに来た、という車に目をやる。

ん？車？
「え？車ってあれ？」

保険会社勤務とは関係なく、佐野は車がそこそこ好きだ。
自分でも好きだからこその、こだわった車を所有している。

その佐野の目の前で、エンジンが掛かったままのそれ。
──マセラティじゃねーか！

オーナーがオーダーして作られるそれは、イタリア車の中でも落ち着いた雰囲気で、オーナーによって、全く仕上がりが違う。

非常にセンスを問われるし、もちろん高価でもある。
うっひょーい、となりながら、佐野はあらゆる角度からその車を見る。

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