声と性癖
はーー…、美しい…。
イタリア車はなんで、こんなにキレイなんだ。

このデザイン重視の無駄な曲線。
そのくせ、計算され尽くしたカーブ。

イタリア車はとても女性的だと思う。女性に似合う、という意味ではなく、存在が女性的。
だからこそ征服したいと男が惹かれる車なのだ。   

佐野はその代表格に、アルファロメオのコンバーチブルに『ジュリエッタ』という車種がある、と考えていた。

『ジュリエット』のイタリア読みであるそれは、非常に美しく洗練されたデザインで、またとても個性的でもある。

イタリア人は車のみならず、ライフスタイルも、考え方も、日本人とは全然違うところに面白みを感じるし、それこそが様々な美を生み出すのかもしれないと思っていた。

車の中を覗くと、シートの革の質感も最高だ。
また、内装がいい。
いい車には価値がある。

佐野がうっとり眺めていると、きゃぁーー!と一際黄色い声が聞こえて、ふと見たら、いわゆるお姫様抱っこ状態の高槻が、蓮根によって運ばれてくるところだった。

愛されてんなあ高槻。
しかし、すげーなこの人。
そう思う佐野だ。
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