声と性癖
「玉ねぎ炒めていいですか?」
「ん。先にお肉入れましょう。」
「結衣さん、これ使って?」

涼真が冷蔵庫から出してきたのは、紙に包まれたお肉だ。
つまりグラム売りのものを、専門店で購入してきたということだ。

「また、こんなにいいお肉買ってきて……」
「だって、せっかく結衣さんが作ってくれると言うから。」

「煮込んじゃうのにー……」
「まあまあ、思い切り美味しいものを食べましょう。」

もったいないーと言う結衣の頬に、涼真がちゅとキスをする。

結衣のどんな表情も、可愛くて仕方ない涼真なのだ。

その時、ピンポーンと呼び鈴の鳴る音。
二人は顔を合わせた。

「ん?」
「こんな時間に……?」

土曜日の夜9時である。
人を訪ねるには若干遅い。
「ねこさん?」
「いや、今日はお届けの予定はないです。ポチってもないですし。」

涼真が、インターフォンの画面を見る。
そこには若い男性の姿だ。
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