声と性癖
「で、こんな時間にどうした?」
「そう!俺のマンション、帰ったら、上の住人が風呂溢れさせたらしくて、水漏れしてたんだよー。」

「え?!」
「この時間だから、管理会社には電話繋がんねーし、とりあえず、避難させて。」
「大丈夫か?」
「だいじょばねーよー。まあ、でも起こったもんは仕方ねーし。先方の連絡先も聞いてきたから。どーやって対応すんのか、知らねーけど。」

うずうず……。
「賠責じゃないかな。」
結衣はつい、ぽろっと言葉が出てしまう。
「結衣さん?」
楓真は目を丸くしている。

「このケースはお相手方に100%責任がありますから、向こうに支払い義務がありますよね。賃貸なら必ず保険に入っていますから、補償はしてもらえると思いますよ。」
つい、結衣の口からはいつものように言葉が出てしまう。

「お相手の方ご本人が溢れさせたのなら、賠責ですし建物構造上の問題なら、別の保険です。でも、どちらにしても現状復帰にご負担はないと思いますよ。」
大丈夫と結衣はにっこり笑った。

お仕事モードの結衣を久々に見て、涼真は結衣に見蕩れている。
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