声と性癖
「ちょっと安心しました……けど、何者ですか?」
「通りすがりの保険会社の者です。」
そう言って結衣はにっこり笑う。

「結衣さん、ホントにあなた……素晴らしいですね。」
うっとりとした涼真の声。
いえ!一応、それが仕事なので!

「……というか、仕事モード素敵です……。」
そっちか……。

「ごめんなさい……つい、スイッチ入ってしまった。あの、管理会社に連絡したらちゃんとしてくれると思いますけど、何かあれば言って下さい。アドバイスは出来るかも知れないので。」

結衣はそう言って、楓真に笑顔を向ける。
「是非!助かります!」

「結衣さんは無防備に笑顔を振り撒かないでください。楓真、その気になるなよ。結衣さんはお仕事モードだ。」
涼真が楓真に釘を刺している。

「可愛いってのは、一般的な褒め言葉だよ。一般的に見て、結衣さん可愛いじゃん。
涼真兄がもう愛してやまないってのは分かってるんで、揺らがないし、その気にはならないから。」
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