声と性癖
仲良し兄弟なんだなあ。
見ていて、結衣はにこにこしてしまう。

何となく涼真を見ていると、独りで生きている感じがする。
けれど、実のところはこんなに仲の良い兄弟がいて、歯に衣着せぬやり取りが出来る相手がいて良かった、と思うのだ。

「それにさぁ、なんなのそのさり気に色んなお揃い。見てるこっちがげんなりするんですけど。」
「部屋着なんだから、構わないだろう。」

「あー、さっきから、すっげーいい匂い!バタバタしてて、何も食ってねーし!」
何も食べていない!と言う楓真に、結衣はダイニングの椅子を勧めた。

「じゃあ、一緒に食べましょう。ビーフストロガノフ、お嫌いじゃないといいんですけど。」
「ハヤシライスとは違うの?」

楓真は、きょとん、として結衣に聞いてくる。
あまり、人見知りしないタイプのようだ。

「似てますけど、ちょっと違いますね。デミグラスでも味付けするんですけど、私のは、ローリエの風味と味が濃いんです。本当はサワークリームを入れるんですけど、私は生クリームを入れるのが好きで。」
そう言って、結衣は仕上げの生クリームを分量入れた。
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