声と性癖
涼真は最後にきれいに、ブラシしながらブローして、ヘアオイルまで付けてくれた。
正直、癖になりそうなくらい快適なのだ。

「出来ましたよ。」
涼真の仕上げはいつも完璧だ。

「ありがとうございます。」
「お礼はキスでいいですよ?」
これも、最近いつものやりとりである。

結衣は涼真の首の後ろに、そっと両手を回して唇を重ねた。
それがだんだん深くなるのも、いつものこと……だが。
「涼真さん、ダメ……。」
「嫌です。気にしないでください。」

「今日はダメ。」
結衣はぐっと涼真の身体を引き離すために、押した。

「なんで?」
分かっているはずなのに、涼真は緩く首を傾げる。
もちろん、理由は楓真がいるからだ。

しかし、ベッドに腰掛けて結衣の腰を抱いていた涼真は、全く腕を緩める気配はない。

「だって、楓真さんが……」
「じゃあ声、出しちゃダメですよ。」

しー、と涼真は口元に人差し指をあてる。

壮絶に艶っぽいけれど、結衣は嫌な予感がした。

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