声と性癖
結衣の甘い声は全部涼真に吸い取られて、好きな人とひとつになる幸せを噛み締めつつ、二人は甘くて、幸せな時間を過ごしたのだった。

「…はよ…」
結衣が洗面所で洗濯の準備をしていると、楓真がふらりと現れた。

「あ!おはようございます。洗濯物、洗濯機の中に入れておいて下さいね。朝食、パンなんですけど……」
「ん……。すいません。」

頭が鳥の巣のようになって、少しぼうっとしている楓真を見て、結衣がくすくす笑いながら案内する。

「眠れました?」
「あ、まあ……」
寝ぼけたような様子なので、そう尋ねてみたわけなのだが。

「寝れたんだけど、ちょっと……」
ん?
「寝付きが……」
ふんふん?

「えと、涼真兄の声が……その、少し聞こえて。ごめんなさい。聞くつもりはなかったんだけど……」
俯いている楓真の耳が赤い。
がたっ、と結衣は手に持っていた洗濯用のカゴを床に落とす。
< 217 / 270 >

この作品をシェア

pagetop