声と性癖
独りでいることに覚悟を決めて、きっと誰にも理解は得られないと距離を置き、独りで立とうとする。
きっと何度も何度もそうしてきたんだろう、と思う。

結衣は涼真の頭をきゅっと抱きしめた。
「涼真さんは頭が良くて繊細な人です。だから、人が気付かないところに気付いてしまう。五感が鋭いから、声や匂いに反応してしまうんだと思います。不思議ですよね。私、不快に思ったことないですよ。」

「結衣さん……?」
「覚えてます?涼真さん私に約款を読むのでも構わないって言ったんです。」
くすくす結衣は笑う。

「会話は噛み合わないし。でも、会うといつもどきどきさせられてしまうんです。」

「僕はあなたの声を聞いて、姿を見てどんどん欲深くなっていくのに気付いて……。最初は少しだけ、一緒にいたいって思っただけだったけれど、もっともっと……となりました。」

結衣はふふっと笑う。
「私も実は涼真さんの声、好き。」
「結衣さん愛してます。」
「はい。」

「なんかこんな風に結衣さんに抱かれるのも、照れますけどすごくいいですね。」
「いつも甘やかされてるばっかりですからね。」
「僕が結衣さんに甘えているんです。」
「んん?」
< 222 / 270 >

この作品をシェア

pagetop