声と性癖
た、確かに代理店かも知んないけど、どこで?!
一体どこでその情報を入手して、しかもその席に……。

しかも、アナタ忙しいでしょ?!

結衣は一瞬、目眩を起こしそうになったが、そんなことで倒れている場合ではない。
何とか踏みとどまって、笑顔で演壇に向かう。

「皆さん、お世話になっています。コールセンターでスーパーバイザーをしております、高槻結衣と申します。」
マイクに向かって、挨拶をする。

「結衣ちゃーんっ!」
そう声を上げたのは、多分知り合いの営業さんだろう。

会場からはあはは、と笑い声が漏れ和やかな雰囲気に……かと思ったら、その瞬間、最前列からキンっとしたオーラを感じて、結衣は泣きそうになる。

なんなの?!
なんなの、この状況っっ!!

結衣は時折、最前列の恋人から壮絶な流し目を送られながら、鉄の意思で研修を進めた。

動揺しないよう、訓練してきたつもりだが…。
これで動揺しない人がいたら、むしろ教えて欲しいよっ!

スライドとレジュメを駆使して、何とか研修室を後にした結衣だ。
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