声と性癖
「高槻さん。」
と、結衣を後ろから呼ぶその声は……。
「蓮根先生。」
なんでもないように、結衣は笑顔を浮かべる。
平常心、平常心……。

「少し質問なんですけど、いいですか?」
「はい。」
結衣はそのまま腕を取られて、階段に連れて行かれた。
ビルの高層階なだけに、ほとんど使用されていない階段だ。

階段を少し上がった踊り場で、壁に身体を押し付けられそのまま唇を重ねられた。
いつものキスなのに、いつもと違うそのシチュエーションに、結衣はぞくんとする。

「……ん…っ、涼真、さん……だめ……」
「こんなに興奮するシチュエーションあります?」
結衣を見つめる涼真の目が熱い。

分からなくもないけど、そういう問題じゃ……。
「こっち、おいで。」
手を引かれて階段を上がった先は、屋上の踊り場。
と言っても屋上は解放されているわけではないので、誰も来ない。

「ここならいいでしょう?」
壁際に追い詰められて、涼真の腕の中に捉えられる。
てか、なんでそんなこと知ってんのっ?!
「ダメですから。絶対っ。」

ふっ、と鼻先で笑われた。
「そんなこと言って……」
「……ん……」
< 229 / 270 >

この作品をシェア

pagetop