声と性癖
「落ち着いてから戻ってくださいね。今のあなた、色っぽ過ぎますから。」
「御手洗行って、戻ります。」
「そうしてください。」

すうっ、とあごを持ち上げられた。
「愛してますよ。」
唇に軽いキス。

にこっと、笑って涼真は階段を降りていく。
……っな、なにを……あ、遊ばれた!!

踊り場には胸をどきどきさせて、崩れ落ちる寸前の結衣がいたのだった。

結衣がホテルに戻ると、ロビーには当然の如く涼真がいる。

「結衣さん。」
まるで、待ち合わせでもしていたかのようだが。

単なる待ち伏せなんで……。

最近、結衣は涼真のこの振る舞いに慣れてきたような気がする。
「涼真さん。お仕事大丈夫ですか?」

「会社には今日は研修だって言ってありますから。」
「よく分かりましたね、ホテル。」
「だって研修の時はここって決まっていますよね。」

まあ、そうなんですけど。
涼真がカードキーをひらりとして見せる。
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