声と性癖
番外編2:あの時の楓真くん
「女の子の笑い声って、ちょっと喘ぎ声を連想させるよな」
真顔で兄がそう言い出した時は、ん?と思った楓真だが、その時は曖昧に笑っておいた。

蓮根楓真《はすねふうま》の高校1年の春のことだ。

兄の蓮根涼真は近郊でも有数の進学校に通っており、大学に進学後は一流企業にでも就職するのだろうと思っていた。

蓮根家の父は大学教授だ。
父と一回り以上離れている母との両親のもとで育った。
父は心理学の教授で、正直なところ少し浮世離れした所がある。
母はそれに比べると多少現実的だが、元がお嬢様なので、やはりどこかふんわりしている。

それでも涼真が優秀なのは、母の実家がそこそこの大きさの塾を経営していたからだ。
母に付いて塾に行っていた涼真は、そのうち本格的に通い始めるようになり、勉強漬けになっていったそうだ。

もちろん楓真も同じように、塾には通わされたのだが、自分は勉強より部活動とかの方が楽しかった。

まあ、そうは言ってもきちんと勉強することを教えてもらえたことは、今でも良かったとは思っている。

涼真兄、頭良すぎておかしいんだろうか……。
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