声と性癖
笑い声で喘ぎを連想する、とか楓真は考えたこともない。
ただ兄の方が頭が良くて、分析力に優れているから、その一種でそう感じるのだろう。

凄いなぁと純粋に思ったものだ。
その後、女の子の笑い声を注意して聞いてみたが、楓真には特に何か感じることなくて、ちょっと分からなかった。

別の高校に通っていたので、兄である涼真とは時間が合わない。
家族とはいえ、なかなか顔を合わせる機会がなかったある日、朝、兄と洗面所で一緒になった。

「涼真兄さぁ、この前女の子の声の話してたじゃん?」
「ああ」
2人で並んで髪をセットする。

「喘ぎって、アノ時の声ってこと?」
「お前、朝から元気だな……」

呆れたような涼真の声に、楓真は言葉を詰まらせるしかなかった。
まあ、確かに質問の仕方が悪かったのかもしれないが。

「つか、声ってどーゆーこと?」
涼真は一瞬考えて「また、今度な」と言って洗面所を出ていく。

「今度って、いつだよ!」
「今度は今度だよ」
< 241 / 270 >

この作品をシェア

pagetop